組織改善

ほとんどの企業が、重大な人的リスクを抱えています。それを知らないまま・・・

もし、御社がまだ十分なメンタルヘルス対策をしていないなら、経営に重大なダメージを与える次の3つの人的リスクを背負っていることになります。今からそれをお話します。

メンタル不調による3つの重大な人的リスク

1.健康関連コストの増加

健康関連コストとは、従業員が健康であれば、支払わなくてもいいムダ金のことです。下の図表は、東京大学政策ビジョン研究センターが2017年に3つの企業(合計3429名)で発生する健康関連コストを分析したものです。データは病院の受診データ(レセプト)が元になっています。つまり全員何かしらの病気にかかった従業員ということです。改めて図表を見ると、アブセンティーズム、医療費、プレゼンティーズムが目立ちます。

平均(円) 割合(%)
2014年度医療費 113,928 15.7
労災補償費 6,870 0.9
傷病手当支給額 7,328 1.0
アブセンティーズム 31,778 4.4
プレゼンティーズム 564,963 78.0
724,868 100

まず、「アブセンティーズム」です。これは、通院・休職など、従業員が会社に来ないことで本来得られるはずの生産性が得られないことで生まれる損失費用です。この費用は全体の4.4%で、1人あたり年間約3万2000円の損失費用の発生に相当します。

次に「医療費」です。企業が負担する分ですね。これは15.7%で、1人あたり年間約11万4000円の費用が発生しています。

そしてダントツで大きいのがプレゼンティーズムです。これは出勤しているのに、健康不調によって、本来のパフォーマンスが発揮できずに失われる損失費用です。割合は約8割で、従業員1人あたり、年間約56万5000円の損失費用となります。

さらに、この研究で、プレゼンティーズムと一番関連性が深いのがストレスなどの心理的リスクであることが分かっています。つまり、メンタル不調を放っておくとプレゼンティーズムによる損失費用がどんどん膨らんでいくということです。

ではメンタル不調に限った場合、年間どれくらいの健康関連コストが発生するのでしょうか?この答えも、同じ研究の中にあります。答えは、約68万6000円(医療費約6万3000円、プレゼンティーズム約56万9000円、アブセンティーズム約5万4000円)でした。

別の慶応義塾大学の研究では、うつ病の労働者一人当たり、アブセンティーズムとプレゼンティーズムの損失費用を合わせて年間約65万円の損失費用が発生すると試算されています。よく似た結果ですね。つまり、少なく見積もっても、メンタル不調の従業員一人あたり年間60万円の健康関連のムダな費用が発生している計算です。

何らかの精神疾患やメンタル不調に陥る従業員は全体の18%程度と言われています。例えば、御社の従業員が200人だとすると、単純に、200人×18%×60万円=年間2160万円の損失費用が発生していることになるのです。ちなみに、オーストラリアの大規模調査でも、従業員200人の企業の年間の健康関連コストは、27万オーストラリアドル(約2270万円)という試算結果が出ています。

つまり、御社の従業員の約18%がメンタル不調か何らかの精神疾患を抱えていて、御社は、彼ら一人当たりに平均して年間60万円以上の健康に関連するムダ金を支払っている可能性があるということです。そして、その多くは目に見えにくいプレゼンティーズムによるものなのです。

2.労災関連コスト+負の影響

これも広い意味で健康関連コストですが、少しタイプが違うので分けました。というのも、労災関連コストは他と違って、頻繁に発生するわけではないからです。でも、もし発生したなら、非常に大きい金額になります。

例えば、2000年に電通の従業員が長時間労働によってうつ病になり、自殺するという事件が起きました。この事件で電通は1億6800万円の損害賠償を支払いました。

ここで一つお伝えしたいことがあります。先ほど、「労災は頻繁に発生しない」と言いましたが、実は、精神疾患の労災認定は年々増えています。

上図は厚生労働省が報告している精神疾患の労災認定数の変化をグラフ化したものです。精神疾患の労災の請求件数も認定件数も増える傾向にあるのが分かります。また、労災が起これば、従業員の士気も落ちます。例えば、身近な同僚が、うつ病で自殺をしたなら、とても平静では働けないでしょう。まわりからの企業イメージもガクンと下がります

3.人材関連コストが増える

さらに、従業員のメンタル不調が増えると、離職率が上がり、優秀な人材を確保し続けるためにどんどん多くのコストが必要になります。まず新規採用コストがかかります。何とか、新しい人材を確保しても、その人を育成しなければいけまんせんね?ですので、育成コストもかかります

もう一つ付け加えると、最近の求職者は健康的に働ける職場を重視しているということです。下の表は2017年に経済産業省の事業の一環として行われた調査報告をまとめたものです。大学生とその親にWEBでアンケートをとっています。

大学生の回答(1399名) 親の回答(1000名)
●働く環境に望むことは?

1. 職場内の人間関係が良好だ 64.8%

2. 仕事にやりがいを感じられる 55.3%

3. 心身の健康を保ちながら働ける 50.8%

●子供の働く環境に望むことは?

1. 心身の健康を保ちながら働ける 67.1%

2. 仕事にやりがいを感じられる 61.1%

3. 職場内の人間関係が良好だ 52.9%

大学生も、その親もこの3つがずば抜けて高くなっています。しかも、項目はどちらもほとんど同じです。人間関係とはまさしくメンタルヘルスに直結したものですので、大学生もその親も職場を選ぶ際に、心身が健康で働ける職場をとても重視していることが分かります。

同じ調査で、大学生の7割が就職先を決める際に親のアドバイスを聞くと回答しています。つまり、メンタルヘルスに配慮している企業=求職者に選ばれる企業でもあるのです。

さらに、今後は生産労働人口がますます減っていくことは確実です。と言うより、すでに減り始めています。一方で、精神疾患による労災認定やメンタル不調はどんどん増えています。

つまり、今お話してきたようなリスクは、一過性のものではないということです。むしろ、今後さらに深刻になっていく可能性があるのです。早急にメンタルヘルス対策をする必要があるのはそういうわけです。

じゃあ、具体的にどんな対策をすべきかというお話ですが、大きく分けて次の3つが考えられます。

  • 職場環境改善
  • 従業員のメンタルヘルス教育
  • 相談体制の確立

ここで、問題になるのは、これらの対策をすることで本当に今述べたようなリスクを軽減できるのか?また、できるとしてもどれくらいできるのか?ということだと思います。確かに、「何をやればどれくらいのリスクを軽減できて、費用対効果はどれくらいか?」というのを具体的に示すことは非常に難しいことです。なぜなら、メンタルヘルス対策の取り組み方も、職場環境も企業によって多種多様だからです。

そう言うと、「そんな効果もあいまいな対策に、大切な時間や労力を投資できるわけないだろ!」と思われるかもしれません。確かにその通りです。ですが、少ないながらも、メンタルヘルス対策の費用対効果を報告した研究がありますのでご紹介します。

職場環境改善の費用対効果

これは、東大を中心とした研究者チームの研究です。この研究では、「6つの職場の従業員47名の中からファシリテーターを育成し、彼らに職場環境改善を行ってもらう」という対策の費用対効果を計算しました。

費用 根拠 費用総額
ファシリテーター教育 従業員賃金 4時間×2,000円×6名 48,000円
講師謝金 4時間70,000円 70,000円
管理職への説明・教育 管理職賃金 1時間×4,000円×6名 24,000円
講師謝金 1時間30,000円 30,000円
ワークショップ 従業員賃金 2時間×2,000円×47名 188,000円
合計 360,000円

費用は、右のように仮定しています。その結果、費用対効果は約1.98~2.98、つまり36万円の投資に対して、約70万円~107万円のリターンが見込めるという結果になりました。

メンタルヘルス研修の費用対効果

次に、教育研修です。これは、5職場の延べ482人の従業員にストレスマネジメント研修を行うというものでした。研修は1回30分で月1回×6ヵ月行われました。費用は下の通りです。

費用 根拠 費用総額
従業員賃金 0.5時間×2,000円×482名 482,000円
講師謝金 30分15,000円×6回×5職場 450,000円
合計 932,000円

結果は、費用対効果が、1.57~2.36、つまり、約93万円の投資に対して約146万円~219万円のリターンが見込めると試算されました。オーストラリアの研究でも、1時間約2万円で専門家を雇って従業員向けのワークショップを行ったところ、費用対効果は約2だったと報告があります。

この研究で、専門家の時給を約5万円にしても、まだ費用対効果はプラスであると結論付けています。

カウンセリングの費用対効果

カウンセリングなど相談の費用対効果を研究したものは見つかりませんでしたが、横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンターの研究者たちが、面談によってストレスがどれくらい下がるかを調べたものがあります。

その研究では、面談を受けた従業員は受けない従業員より、心理的ストレスも身体的ストレスも両方とも統計的に有意に下がると報告しています。

つまり、メンタルヘルス対策は効果があるのです

いかがでしょうか?いくぶんあいまいな印象は否めませんが、メンタルヘルス対策が経営にとっても重要な要素になることはご理解いただけたと思います。

さらに最近では、「健康経営」が注目を浴びています。健康経営とは、従業員の健康にかけるお金を費用ではなく、投資ととらえて、従業員を健康にしながら、結果的に企業の生産性を高めていこうという考え方です。

健康経営をある基準以上行っている企業には、厚生労働省から「健康経営優良企業」に認定されます。認定されると、さらに大きなメリットがあります。例えば、2017年に認定された健康経営優良法人(中小規模法人部門)の95社は次のような効果があったと報告しています。

  • 顧客や取引先に対する企業イメージが向上した
  • 講演・インタビュー・新聞などPR機会が増えた
  • 社内コミュニケーションが活性化した
  • 採用募集・求人への応募者が増えた、離職率が減った
  • 従業員の仕事満足度・やる気が向上した、生産性が向上した
  • 時間外労働が減った(労働時間の適正化)

どうですか?魅力的だと思いませんか?従業員の方が喜んで生き生き働いている姿が目に浮かびませんか?このようにメンタルヘルスに投資することは、御社にとっても非常に有意義な意味を持っています。

何よりもあらゆる組織の存在意義は「利害関係者(ステークホルダー)、ひいては全ての人を幸せにすること」のはずです。そうであるなら、従業員が健康で幸せに働くことは組織の存在意義そのものではないでしょうか?

では改めて・・・

  • 職場環境改善
  • 従業員のメンタルヘルス教育
  • 相談体制の確立

を実践していくためにはどうすればいいのでしょうか?大きく分けて2つのやり方があります。一つは産業保健総合支援センター(以下、産保センター)のような公的機関を利用することです。産保センターを利用すれば専門家が無料で出張して、メンタルヘルスの研修を行ってくれます。職場環境改善のアドバイスももらえます。ですが、無料ですので、出張してくれるのは一企業一回だけで、従業員のメンタルの相談には対応していません。

もう一つは、私のような専門家を雇うことです。従業員のメンタル相談にも対応できますし、それを通じた職場環境改善のアドバイス、メンタルヘルス研修も全てご提供できます。出張回数・時間・サービス内容なども、御社のご都合に合わせて自由にカスタイマイズできます。詳しくは、次をご覧ください。

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